2016年1月21日(木)
読んだ本や、観た映画や展覧会、聴いた音楽のことなどを詳しく書こうとは思っているものの、時間ばかりが過ぎていきます。
時間の使い方がへたくそなのか、それとも、やろうとしていることが欲張りなのか。たぶん、根がのんびりしている上に、時間の使い方がへたなのが原因のような気がします・・・
自分のための忘備録を兼ねて、2015年12月に観たり、読んだり、聴いたりした方々を列記しておこうと思います。
。
●死んでいない者
滝口悠生著/『文學界』2015年12月号
滝口さんの作品は、2011年の第43回新潮新人賞を受賞した『楽器』からほとんど読んでいます。2014年に野間文芸新人賞、2015年に三島由紀夫賞の候補になっているので、いずれ芥川賞の候補にもなるんだろうなあと思っていたところ、『ジミ・ヘンドリクス・エクスペリエンス』で第153回芥川賞の候補になりました。このときの受賞は、『火花』の又吉さんと、『スクラップ・アンド・ビルド』の羽田さんでした。
受賞は逃したものの、また候補になるんだろうなあと思っているうちに、『文學界』12月号に『死んでいない者』が掲載されました。
葬儀を舞台に、故人の親類や知人の様子が描かれている作品なのですが、とにかく登場人物が多いです。頭の中では整理しきれないと思ったので、ノートに系図を書きながら読みました。
もしかすると漏れがあるかもしれないのですが、私が数えた限りでは、登場人物は24名でした。外国人と結婚している女性がいたり、変わった雰囲気の引きこもりがいたり、行方不明の家族がいたりなど、ひとりひとりの人物設定をしっかり作っていることが伝わってきました。
それなのに、各人物を深く掘り下げるような場面はありません。あくまでも、葬儀に集まっている人たちの様子を淡々と描いています。いろいろな楽器が音を鳴らしてひとつの音楽を奏でているような印象を受けた作品でした。
今作で芥川賞を受賞したことを知ったときは、なんだかとてもうれしかったです。親戚のおばちゃんの気分で、受賞のニュースをかみしめていました。
●ドリトル先生アフリカゆき
ヒュー・ロフティング(作・絵) 井伏 鱒二(訳)/岩波書店
小学校5年生の甥っ子のクリスマスプレゼントに贈りました。読んだのが遠い昔のことなので、どんな話だったのか記憶が曖昧で、図書館で本を借りました。
再読して一番の発見は、訳が井伏鱒二だったということです。あとがきに当時の様子が書かれているのですが、担当の方が訳したものを井伏鱒二が物語として再構築したようです。
あとがきには、作者がこの物語をしたためた背景も書かれていました。第一次世界大戦でイギリス陸軍の兵士として出征した際、戦地で傷ついた軍用馬が殺処分される場面に遭遇したそうです。そのとき、「人間はケガをしても治してもらえるのに、どうして動物は殺されなければならないのだろう」と感じたことが、ドリトル先生の物語の素地となったようです。
物語はもちろん、あとがきの内容もおもしろかったです。
甥っ子くん、気に入ってくれるといいなあ。
●夏への扉(新訳版)
ロバート・A・ハインライン (著) 小尾芙佐 (翻訳) /早川書房
こちらも、甥っ子のクリスマスプレゼントを機に再読。
――ぼくが飼っている猫のピートは、冬になると“夏への扉”を探しはじめる。家にたくさんあるドアのどれかが夏に通じていると信じているからだ――
この一文がとても好きです。家の中で夏への扉を探す猫の様子が目に浮かびます。「マッシュは夏が苦手だから、きっと冬への扉を探すんだろうなあ」などと、うちのねこと重ね合わせながら読みました。ねこが大活躍する場面があり、物語のキーパーソン的な役割を果たすのもねこ。
ねこ好きが安心して読めるSF作品でした。
●Wings Flap
L'Arc~en~Ciel/キューンミュージック
前作の『EVERLASTHING』から1年4ヶ月ぶりのシングル。発売が発表されたのは、2015年9月21日に夢洲野外特設会場で開催された「L'Arc~en~Ciel LIVE 2015 L'ArCASINO」のライブ中でした。
ライブ会場は、土地勘のまったくない大阪の、しかも人工島だったこともあり、また、2日前の19日には、千葉県・袖ヶ浦海浜公園で開催された「氣志團万博2015」に行っていたこともあり、 L'ArCASINOは都内の映画館のライブビューイングで観ていました。
が、L'ArCASINOのオープニングの時点で、「やっぱり、大阪まで観に行けばよかった・・・」と思い、新曲の『Wings Flap』で行かなかったことを激しく後悔。軽やかで、体を動かしたくなるような曲調がツボにはまりました。ナマで聴きたかった。。。
ちなみに、LPレコードサイズのジャケット、CDとブルーレイ(『Wings Flap』のライブ映像、LIVE 2015 L’ArCASINO -Opening Animation-)、フォトブック、 L’ArCASINO風のイラストが描かれたお札型ステッカーが封入された完全受注生産限定盤を注文。
ジャケットは本棚の一角にドーンと飾っています。前作の『EVERLASTING』もLPレコードサイズ。本棚を整理して、2枚並べて飾りたいと目論んでいます。
●DEPARTURES(収録アルバム: #globe20th -SPECIAL COVER BEST- )
HYDE/avex globe
1996年に発売された「JR Ski Ski」のCMソングのカバーです。いつ聴いても、冬を感じさせてくれるステキな曲。当時、カラオケで歌おうとしたものの、キーが高くて難しくて挫折した記憶がよみがえります・・・
わたしはハイドさんの声や表現の仕方がとても好きです。この『DEPARTURES』を聴いて、心が震えました。ハイドさんの声質や表現力や感情ののせ方は、女性が歌う曲にとても合っているような気がします。静かな部屋の中で、イヤホンで聴いて、曲の世界に浸るひとときが幸せです。
●映画 グラスホッパー
原作者の伊坂幸太郎さんの作品が好きなのと、少し前からHey! Say! JUMPの山田くんに興味を惹かれているので、公開になったら絶対劇場で観ようと思っていました。
山田くんは、やっぱり顔立ちがキレイです。それだけに、人を次々と殺して血まみれになったり、目に狂気が宿ったりする場面は不気味でした。彼は運動神経もいいのですね。動きにキレがあって、アクションも見ごたえがありました。こういうクレイジーな役をまた観てみたいです。
それから、菜々緒さんの悪役もよかったです。美しくスレンダーな姿で大声をあげたり、体をぶつけて顔をゆがめたり、虫を潰すような表情で人を殺したり。見た目と行動のギャップがありすぎで、強烈な印象でした。
あと、朝ドラ『あさが来た』を観ているので、波瑠さんがあっけなく殺されてしまったことが、ちょっとショックでした。婚約者の回想シーンで、結婚生活の金銭面を気にしつつも、「ま、ふたりで働けばなんとかなるか」と明るく言う場面がとてもいいなと思いました。
観客の大半は、山田くんのファンとおぼしき若い女子や若者のカップルだったので、おばちゃんのわたしはなんとなく気がひけていたのですが・・・。でも、勇気をふり絞って、劇場で観てよかったです。
●村上華岳―京都画壇の画家たち
山種美術館
お友達からチケットをいただいたので、最終日の12月23日に観に行きました。日本画だけの展覧会を見るのは初めてのような気がします。
見どころは、重要文化財に指定された「裸婦図」という作品だったのですが、個人的には「羆」という作品に惹かれました。どこからかのっそりと出てきたような羆の姿を描いている一枚です。羆の表情が柔和なのと、思わず触りたくなるようなフワフワの毛並みがいい感じです。
説明書きを読んで、美術学校時代の19歳の時に描いた作品だということがわかり、驚きました。後ろにいた見知らぬおじさまも「ほう、19歳でこれだけ描けるとは」とひとり言を言っていました。
ほかにも、美術学校時代の師匠や同期の画家の作品も展示されていました。
どうも私は、毛並みがふわふわしている動物が好きなようです。人物画や風景画などいろいろな作品が展示されていたのですが、木の幹で鹿が角をといでいる「角とぐ鹿」、雪の中を歩く狐を描いた「狐」など、ついつい動物の絵に目がいってしまいました。
中でも一番、印象に残っているのは、村上華岳の師のひとりである竹内栖鳳の「班猫」という作品です。絵や美術品などにうとい私でも、見たことのある絵でした。後ろ向きで頭を正面に向けて毛づくろいをしている猫の姿が描かれています。ふんわりとした毛並み、猫特有の体の柔らかさ、カメラ目線(?)のエメラルドグリーン色の目と、今にも動き出しそうなリアルさです。
この絵の背景にあるエピソードも興味深かったです。
山種美術館のサイトでは、次のように説明されています。
--------------------------------------
モデルとなった猫は栖鳳が沼津に滞在していた時、偶然見つけた近所の八百屋の
おかみさんの愛猫であった。その姿に中国南宋時代の徽宗皇帝の描いた猫を想起
し、絵心がかき立てられたため、交渉して譲り受けて京都に連れ帰り、日夜、画
室に自由に遊ばせながら丹念に観察して作品に仕上げたのであった。
-------------------------------------
あまりにも良かったので、帰りに美術館の売店で、「班猫」のポストカードとチケットホルダーを購入。チケットホルダーは、年明けのライブから稼働しています。ポストカードは部屋のどこかに飾りたいと思います。
竹内栖鳳の「班猫」、また観たいです。